「紐銭(ひもせん)」をご存知ですか?
紐銭は、大阪をはじめとする関西で知られるお宮参りの風習で使われるお祝い金のことで、紐銭と書かれたご祝儀袋を赤ちゃんのお祝い着・産着の紐に結びつけます。
今回の記事では「紐銭とは何か」「ご祝儀袋の書き方」「紐銭の付け方」「包むお金の相場」について解説します!
目次
紐銭とは?
紐銭(ひもせん)とは、大阪をはじめとする関西で知られるお宮参りの風習で使われるお祝い金のこと。親戚や近所の親しい方からいただいたご祝儀袋を、上記の写真のように、赤ちゃんのお祝い着・産着の紐に結びつけます。
紐銭には「一生お金に困らないように」という願いが込められており、もともとは「赤ちゃんのお披露目・お宮参りとして親戚やご近所にあいさつ回りをした際、麻紐に通した硬貨を、赤ちゃんの祝い着に結びつけた」ことが始まりとされています。
時代を経て、現在では「硬貨の代わりに、お金を入れたご祝儀袋を結びつける」というスタイルで落ち着いたようですね。
地域によって内容や名称に違いはあるの?
紐銭は、関西・近畿地方では「帯銭(おびせん)」とも呼ばれています。また、名古屋の中部地方では「1年間(12か月間)お金に困ることのないように」という意味を込めて、麻紐に五円玉を12枚通して産着に結びつけます。(※うるう年には13枚になります)
また、お金以外にも、下記のような品物を結びつける地域もあります。
犬張子(いぬはりこ)
「無病息災・成長」「犬の子のように元気に育つように」という願いが込められています。こちらは発祥の地である熱田神宮の周辺地域以外ではあまり知られていないようです。
扇子(せんす)
「人生が(扇子のように)開けますように」という願いが込められています。また「末広がりの人生になるように」という意味もあります。お宮参りで使うときは、扇子に赤ちゃんの名前や生年月日を書きましょう。のし袋に入れ、麻の紐を添えて使用します。
でんでん太鼓
悪霊を払う意味がある縁起がいいものです。「裏表のない快活な子、角のない柔らかい性格に育つように」という願いが込められています。
紐銭はいつ渡すの?
紐銭のご祝儀袋を渡すタイミングは特に決められていません。ただし、お宮参り当日は、ご両親が準備で忙しい場合もあるのでお宮参り前に渡すのも良いでしょう。
また、地域によってお宮参りの風習は異なるので、その地域に沿った渡し方をしましょう。
紐銭の作り方
紐銭のご祝儀袋の選び方
紐銭の水引の結び方は「紅白または金銀の蝶結び」がおすすめ
一般的に蝶結びは結び目を何度でも簡単に結び直せることから、「何度繰り返しても良いお祝い事やお礼」(出産祝いや合格祝いなど)に使います。紐銭をご祝儀袋で渡す場合は、紅白または金銀の蝶結びがおすすめと言われています。
紐銭のご祝儀袋の書き方
御祝儀袋に書く内容は以下のようになります。書く際には、毛筆や筆ペンを使用しましょう。もし、毛筆や筆ペンに慣れていない場合はフェルトペンを使うと良いでしょう。
表書き
水引の上 | 水引の下 |
「紐銭」「御紐銭」「お紐銭」「ひも 銭」 「帯銭」「おひもせん」「御祝」など(※1) |
贈り主のフルネームまたは名字 |
(※1)地域によって異なるため、その地域にあったものを使用しましょう。
水引の下の氏名ですが、複数名で出す場合は以下をご参考ください。
【夫婦連名の場合】
夫の氏名を中央に、妻の名をその左に書く
【3名の場合】
年齢が上位の人の氏名を中央に書き、以下、左へ順に連名する。年齢に関係ない場合は五十音順で書く。
近年は、バランスよく見えるように、連名全体を中央に配置する書き方も一般化しつつあります。
【4名以上の場合】
代表者の名前を中央位置に書き、左横に「外一同(他一同)」と書く
中袋(内書き)
中袋の表 | 中袋の裏 |
中央金額を「金○萬円」 | 左下に送り主の住所と氏名 |
中袋の表には、「壱(いち)」や「萬(さん)」などの大字で「金○萬円」と記載しましょう。
紐銭の準備はどうする?どこで売ってる?
ここでは紐銭の準備について解説します。お宮参りで紐銭が必要なときは、以下の方法で用意するのがおすすめです。
紐銭用のご祝儀袋を購入する
紐銭の文字が入った紐銭用のご祝儀袋を買う方法です。調べたところ、以下のお店で販売している情報がありました。
- Amazon・楽天などのネット通販
- アカチャンホンポ・西松屋などの赤ちゃん用品店(一部店舗のみ)
特にネット通販では、ご祝儀袋に紐銭用の穴が空いている商品や、紅白の水引(着物につける用の紐)がセットになって売っているものもあるようです。 紐銭のご祝儀袋は自分でも作ることができますが、お忙しい方は紐銭用の商品を一度探してみるのも良いかもしれませんね。
100円ショップなどで作る
紐銭用の商品を購入しなくても、紐銭は、100円ショップなどでご祝儀袋をはじめとする材料を買って作る方法もあります。紐銭の準備がお宮参りの直前になってしまった場合でも、近くの店舗で以下の材料を用意すれば、簡単につくれるのでご安心ください!
【紐銭を作る際に必要なもの】
- 紅白または金銀の蝶結びのご祝儀袋
- 着物につける用の紐(水引・麻紐など)
- 穴あけパンチ
- 筆ペン
- 中に入れるお金
紐銭のご祝儀袋の書き方を参考にぜひ、作ってみてくださいね。
紐銭の付け方
紐銭をお祝い着・産着に結ぶ際には、次のような手順で結んでみましょう。ポチ袋などでいただいた際も同様の手順です。
1 | 2 | 3 |
ご祝儀袋の上部(中央か左上)に、 紐を通すための穴を開ける |
穴に、紅白または金銀の水引や麻紐を通す | お祝い着の紐に袋を結びつけて完了です |
紐銭は「ご祝儀袋や品物が多いほうが、より縁起が良い」とされています。なお、近畿地方ではご祝儀のほかに、犬張子、扇子、でんでん太鼓などの縁起物も一緒に結びつけます。
紐銭を結ぶときの注意
お宮参りでは移動が多く、結んだ紐銭やお守りが落ちてきてしまう場合もあります。もらった紐銭や縁起物が、途中で地面に落ちないように、しっかり結んでおきましょう。お宮参りの途中も、無理でなければ、定期的に確認しておきましょう。ただし、万が一落ちてしまっても、良くないことが起きるわけではないので安心してくださいね。
金額の相場やお返しはどうするの?
そもそもお宮参りでかかる費用は何がある?
初穂料
初穂料とは、祈祷を受ける時のお礼として納めます。「初穂」とは、その年に収穫された最初のお米のことで、古来、神様に収穫や豊作を感謝するため献上されていました。
お宮参りのほかにも七五三や秋祭り、収穫祭などの場で初穂の代用として現金を献納するときに「初穂料」として差し出されます。
祝い着(産着)
お宮参りの際に赤ちゃんが初めて身につける着物のことを言います。赤ちゃんが健やかに育ちますようにという願いが込められています。
お祝い金
祖父母や、親族から送られるお金を指し、赤ちゃんのハレの日を一緒に祝いたいという気持ちを形にしたものになります。相場は5,000〜10,000円になります。
食事会
お宮参り後の食事会では、祝い膳を食べ縁起を担ぐ意味や両家の親睦を深めるなどの意味があります。こちらの相場としては、外食で開催する場合1人当たり3,000〜5,000円、自宅で開催する場合はケータリングなどを用意するため1人当たり2,000〜4,000円ほどかかります。
紐銭の金額の相場
金額に厳密な決まりはありませんが、紐銭の一般的な相場は表のようになります。「赤ちゃんの初めてのお小遣い」の意味合いが大きいので、包む金額もそこまで多くありません。
祖父母の場合 | 3,000〜5,000円 |
父母のご兄弟の場合 | 1,000~3,000円 |
ご友人の場合 | 1,000~3,000円 |
お金を包む際には、奇数の金額になるように渡しましょう。奇数にする理由は、中国の陰陽思想に関係しています。奇数は「おめでたい数字」、偶数は「暗い影の数字」とされています。そのため、お祝い事である紐銭では奇数の金額を渡します。
祖父母の場合
一般的な相場は「3,000〜5,000円」になります。
ただし、初穂料や食事会費用、祝い着などを負担する場合やお祝い金を送る場合には、紐銭を送らなくても問題ありません。
お宮参りの負担額が、偏らないように両家で事前に話し合いをすることをおすすめします。
父母のご兄弟の場合
兄弟からの紐銭は、基本的に必要とされません。お宮参りに参加するのは両親と祖父母のみで、兄弟は参加しないことが多いです。それでも渡したいという人は、「1,000円〜3,000円」程度が相場になります。
ご友人の場合
友人も基本的に、紐銭は必要とされていません。ただし仲がよく密接な関係性で、どうしても紐銭を贈りたい場合もあると思います。その相場としては、「1,000円〜3,000円」程度が相場になります。
現金で渡すことに抵抗があるのであれば、カタログギフトや縁起物を送ると良いでしょう。
お返しはいくら必要?
基本的に、紐銭にお返しをする必要は特にありません。ただ「感謝の気持ちとしてお返しをしたい!」という方もいらっしゃると思います。
その場合は、ご祝儀の3分の1を目安に、赤ちゃんのお宮参りの写真を添えたちょっとしたお菓子を贈ると喜ばれるでしょう。
お宮参りが終わった後の紐銭はどうする?
紐銭の代わりとして小物をもらったら、家に飾るなど大切に保管してもよいですね。しかしお金を取り出した後のご祝儀袋は、不要に思うかもしれません。
そのままゴミ箱に捨てても問題ありませんが、気になる場合には、正月の三が日や、まつりごとが行われる、神社やお寺で「お焚き上げ」をしてもらうとよいでしょう。お焚き上げは、縁起物に感謝の思いを込めて燃やし、天に返すという儀式です。不義理にならずに紐銭の処分ができます。
白い紙に包んで捨てたり、神社でお焚き上げをしてもらったりすると、贈り主の赤ちゃんへの気持ちを無下にすることなく、処分することができますね。
他にも、お宮参りの思い出や、いただいたことの記録として保管しておく方もおられるので、ご家庭にあった方法を試してみてくださいね。
まとめ
紐銭は関東ではあまり知られていない、関西独特の風習ですね。地域や風習によっては、お紐せんの「せん」の字を「餞」や「扇」と書くこともあるそうです。
ただし、地域によっては、詳しいやり方や、広まっているしきたりが異なることもありますので、ご両親やご近所の方など、お住まいの地域の風習に詳しい方へご相談いただくと安心ですよ。